去年の5月まで工場マネージャーを務めてくれていたラタナに赤ちゃんが生まれたとのことで、久しぶりの再会をしてきました。
去年会社を辞めてから、自分でビジネスを始めたラタナ。1年3か月ぶりの再会でしたが、もともと細かった体がさらに細くなって、日に焼けて黒くなって、苦労しているなぁという感じがひしひしと伝わってきました。それでも家族のために頑張らなくてはと力強くたくさん話をしてくれて、久しぶりの再会が本当にうれしかった。

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2005年4月にうちの会社に入ってきたラタナはその頃20歳で、今よりももっとひょろひょろした体つきの全く話をしないおとなしい少年でした。
ちょうど今のお店の立ち上げのときだったので、朝からひたすら壁のペンキ塗りを黙々としていた姿を今でも思い出します。
コンポンチャム州で親の農業の手伝いをしていたラタナは、シェムリアップに仕事を探してでてきました。うちの会社で初めは運転手としてスタートしました。
よく働き、頭の回転の速いラタナはめきめきと成長していきました。運転手にしておいてはもったいないなと思い、2009年に日本人スタッフのもと、カンボジア人工場責任者に就任しました。
優秀な日本人管理者のもと、たくさんのことを吸収し、2010年には独り立ちし工場マネージャーに就任しました。工場のことをすべた把握し、色々なことに挑戦し、責任者としての務めをしっかりと全うしてくれていました。

2011年2月に、ラタナが自分で農業のビジネスをしたいので会社を辞めたいと言ってきました。彼の成長と旅立ちを心から嬉しく応援したいと思う反面、離れて行ってしまうことがすごくさびしかったのを覚えています。
1999年にカンボジアに来てから13年、私が関わってきたカンボジアの人の中でラタナほど成長した人を見たことがありません。彼の成長をそばで見守れることが私の何よりの喜びでした。教えれば教えるほどどんどん吸収していき、どんどん顔つきが精悍になり、水を得た魚のように生き生きと仕事をしている姿を見ると、私自身が自分の存在意義を感じさせてもらうことができました。
でも、人はみんなそれぞれの人生を歩んでいるのですから、彼の思いを大切に応援してやりたいと心から思いました。
ラタナは退職日の入っていない退職届を持ってきました。「会社にもマダムにも迷惑をかけたくありませんから、退職日はマダムが決めてください。その日までしっかりと働きます」と言ってきました。
契約書なんで何の意味もなく、自分の都合で都合のいい時に辞めていくのが当たり前なカンボジア社会の中で、そんな言葉を言ってきたラタナの成長に胸が熱くなりました。
資金も微々たるものでスタートするビジネスが、うまくいくかは未知数でしたし、会社にいたほうが安定した収入が確保できるのに、彼は「とにかくチャレンジしてみたい、やってみたい」と言っていました。そんな思いは私に自分がアンコールクッキーを始める時の気持ちを思いださせてくれました。
私も以前お世話になった会社の会長さんに、いい仕事のお話をいただいていたにもかかわらず、どうしても自分でやってみたいという思いが強く、自分で起業をしました。
カンボジアで食品業なんて絶対にうまくいかないと心配していただきましたが、やらずに終わらせたくない、とにかくチャレンジしてみたい、ただそれだけで突っ走ってきました。だから、ラタナのやってみたいという気持ちは痛いほどわかるし、会社にとって彼が抜けることは大きな痛手でも、応援したい、ただそれだけでした。

「本当に困ったとき、どうにもならなくなったとき、最後に絶対に私のことを思い出して必ず連絡してきなさいね。」と最後の日に彼に言いました。ちょっと困っただけだったら絶対に連絡してくるなと。

今月の私の誕生日に、うちのスタッフ経由でラタナがプレゼントを贈ってくれたので、お礼の電話をかけたのをきっかけに、1年3か月ぶりに再会を果たしました。
ビジネスは決してうまくいっているとは言えない様子でしたが、家族のためにやらなくてはいけないという強い言葉が聞けて、前向きにひたすら頑張っている姿が本当に嬉しかった。またいつか一緒に働きたいと心から思いました。

カンボジアに来て、たくさんの出会いがあり、別れがありました。
たくさんの幸せもあった反面、たくさんの苦しい思いがありました。
自分は何のためにここにいるんだろうと自問自答した夜がたくさんありました。
自分の存在を否定したくなることがたくさんありました。
でも、こうやって一緒に働いてよかったと言ってくれる人が一人でもいたら、自分がここに存在してきた意味があるのかなと思えました。

きっと死ぬまで自分は何のためにこの世にこの社会に存在しているのだろうと自問自答し続けるのかもしれません。誰かのために、社会のために役に立っていると感じられることが、私にとっての生きている喜びなのだと思います。

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